文永9年4月10日、日蓮大聖人が51歳の時、佐渡一谷（いちのさわ)で表著され、富木常忍へ与えられた御消息です、大聖人が法華経の行者でありながら天の加護がない理由として、「一には諸天善神この悪国を去る故か、二には善神法味を味わわざる故に、威光勢力なきか、三には大悪鬼三類の心中に入り、梵天帝釈も力及ばざるか」の三つを挙げられています。
日蓮が臨終が少しも疑いなく頭（こうべ）をはねられる時は殊に喜悦有るべし（特に悦ぶべきである）、大賊に値うて大毒を宝珠に易（か）ゆと思う可きか。（交換するようなものと思うべきである）
鵞目（銭）は数のとおり受け取りました。御志申し遂し難く候、法門の事、先ごろ四条三郎左衛門尉殿に書いて持たせた【これは四条金吾につかわした開目抄のこと】。その書を能く能く御覧有る可し、粗（ほぼ）経文を勘え（考え）見るに、日蓮が法華経の行者である事は疑無きか。但し今に天の加護を蒙（こうむ）らざるは一には諸天善神此の悪国を去る故か、二には善神法味を味わざる故に威光勢力無きか、三には大悪鬼三類の心中に入り梵天帝釈も力及ばざるか等、一つ一つの証文や道理はおって書いて差し上げよう。ただ、生涯本より思い切て候。（覚悟の上である）今になって飜返（ひるがえ）ることはないし、その上又遺恨無し。諸の悪人は又善知識なり、摂受・折伏の二義は仏説に依る、敢て私曲に非ず。（けっして自分勝手にゆがめたものではない。）万事は」霊山浄土を期す（期してのことである）、恐恐謹言。
