(272)
中興政所女房御返事
建治2年(ʼ76)4月12日 55歳 中興政所女房
御ぜんは偕老同穴(かいろうどうけつ)のちぎりあり。松さか(栄)えば藤さか(栄)え、し(芝)はな(花)さ(咲)かば、らん(蘭)このみ(果)な(成)りなん。
卯月十二日 日蓮 花押
なかおきの政所女房御返事
【解説】偕老同穴:生きては共に老い、死しては共に同じ墓に入るという意味。
中興入道夫妻の末永い仲睦まじさを願ってやまない日蓮大聖人の慈愛が感じられる。
(286)
御所御返事 弘安4年(ʼ81)7月27日 60歳 波木井一族
清酒一へいじ、かしこまって給び了わんぬ。これほどのよきさけ、今年はみず候。へいじしはら(欠か)き候わんりょうにとどめて候。恐々謹言。
七月二十七日 日蓮 花押
御所御返事
【解説】お酒とへいじ(瓶子=徳利)の供養に対する御礼の書。
おそらく波木井一族の武士への書と思われる。
1820ページ(292)
覚性御房御返事 建治2年(ʼ76)または同3年(ʼ77)の5月5日 55歳または56歳 覚性房
五月五日 日蓮 花押
覚性御房
【解説】弟子の覚性房に、門下からの御供養に対してお礼の言葉を伝えてほしいというお手紙です。五月五日の端午の節句に合わせての御供養で、餅を笹で巻いて蒸した「ちまき」を食べる風習があったことがわかります。
(293)
筍御書
建治2年(ʼ76)または同3年の5月10日 55歳または56歳 覚性房
たけのこ二十本、まいらせあげ候い了わんぬ。そのよし、かくしょう房申させ給い候え。恐々謹言。
五月十日 日蓮 花押
御返事
【解説】供養に対して筍を返礼したことを覚性房から伝えるようお願いされている書。